■映画「宇宙兄弟」をみた。
映画「宇宙兄弟」をDVDで視聴した。
(0)
公開年:2012年、129分
http://www.spacebrothers-movie.com
(1)
僕が本作を知ったのはブタネコ氏の次の記事を拝読したことによる。
(掲載日:2012年12月27日)
現実を認識し、未来を、自分の夢を語ることのできる人間、そして、決して実現しないこと、ただの願望に終わるしかないことを、そうだと知ったうえであえて自分の夢として語ることのできる人間の、微妙な、繊細な、傷つきやすい心の動きをすくいあげるブタネコ氏のこの記事を拝読して、ブタネコ氏の感性にあらためて敬服するとともに、「「子供が夢を見たくなる」要素」(上記のブタネコ氏の記事より)をふくむという本作に興味をもった。
ブタネコ氏の記事の掲載の翌日、僕はさっそく本作のDVDをレンタルしてきた。
(2)
僕は本作を視聴して、泣いた。
涙があふれ出した。
「兄とはつねに弟のさきをいっていなければならない。」("00:00:56")という兄の「六太」。
《宇宙飛行士になる》と子どものころ弟の「日々人」と約束しあった「六太」だが、宇宙飛行士になる道からはそうそうに離脱。弟の「日々人」は宇宙飛行士として月にむけて飛び立つことが決定。が、「日々人」のはからいで、「六太」は宇宙飛行士選抜試験にのぞむことになる。
そして、はれて、宇宙飛行士になった「六太」。
発射台へむかうために、弟の「日々人」とともに、エレベーターをおり、廊下を歩くシーン。ここで、「六太」は「日々人」を追い抜く。
小さいころから弟に言っていた「兄とはつねに弟のさきをいっていなければならない。」という言葉を、ここで実現してみせたのだ。
ここで、僕の涙腺は崩壊した。
宇宙飛行士選抜試験の試験官である「星加」の、「六太」をみまもるまなざしの優しいこと優しいこと。
「権田原」さんの、ビデオ撮影を許容するという、子ども時代の「六太」と「日々人」への配慮もうれしい。
宇宙開発の歴史の主要な出来事を振り返りながら、「六太」と「日々人」の月への旅立ちを描き出す結末が圧巻。
「権田原」さんの配慮で撮影できたビデオの映像が画面にうつるなか、「六太」と「日々人」の「夢」の実現にいたる歴史が描出される。
ロケット発射の中継を見に集まったたくさんの子どもたちを、「権田原」さんが盛り上げる。
いいなぁ。
「夢」って、いいなぁ。
「夢」をかたることができるって、いいなぁ。
「夢」をかたる人間を見守る人がいるって、いいなぁ。
(3)
本作の結末(DVDのチャプターでいえば、「23 宇宙兄弟」)("01:58:31"~)がすばらしいので、簡単にではあるが、その流れをここに書きおこしておきたい。
"01:58:31"~
子ども時代の「六太」と「日々人」が、夜、空を見あげながら、「今日の宇宙クイズ」をしている。
このとき、三脚にセットされたビデオカメラのモニター画面に「権田原」さんの配慮によってJAXAで撮影してきた映像が流れる。
宇宙開発の歴史の主要な出来事がふりかえられながら、それと同時に、「六太」と「日々人」の夢の実現への歴史もふりかえられるのだ。
"02:00:32"~
英語のナレーションがながれる。
(日本語訳の字幕はつぎのとおり)
宇宙開発の歴史に
永遠に名を残す英雄たちは
はたして その日を
想像したでしょうか
彼らに憧れ 宇宙を夢見た
日本の二人の少年が
人類で初めて兄弟そろって
月に旅立つその日を
弟は5年前 月から
奇跡の生還を果たし
兄は弟を追いかけて
宇宙への切符を
手に入れました
それぞれに夢の階段を
登り続けた兄弟が
英雄たちから
その魂を受け継ぎ
いま二人で
宇宙史の新たな扉を
開こうとしています
上空から発射台がうつしだされる。
"02::1:44"~
エレベーターのドアがひらいて、宇宙飛行士たちがおりてくる。
「六太」、「日々人」のすこし後ろをあるきながら。
六太 「日々人」
日々人 「ん?」
六太 「待たせたな」
日々人 「ああ」
六太 「行こうぜ 宇宙」
「六太」が「日々人」を追い抜く。「日々人」、「六太」の背中をみながら。
日々人 「お!」
JAXA。
歴代日本人宇宙飛行士のパネル。
「日々人」と「六太」のパネルが隣同士に並んでいる。
JAXA。
子どもたちがたくさん集まっている。
権田原 「さあ みんな! 打ち上げ2分前よ!」
以下
打ち上げをそれぞれに見守る人々・・・
オルドリンもいる・・・
宇宙開発の歴史に名を残すような人たちでさえも想像しえなかった、兄弟で月面に旅立つという出来事・・・
それこそが「夢」だ。
このナレーションに僕の涙腺はゆるむ。
そして、廊下を歩きながら、「六太」が「日々人」を追い抜いていく。
「兄とはつねに弟のさきをいっていなければならない。」という言葉の実現・・・
「六太」と「日々人」が子どものころから、その宇宙への思いを見守ってきた、「権田原」さん・・・
もう、涙がとまらない。
いい作品だと思った。
(4)
つぎに、本作の感動に水を差すようなことを少々。
視聴途中でどうしても理解できず、次に大問題が起こるのではないかと予想しつつ、なにも起こらなかったのは次のシーン。
真空空間での酸素供給訓練("00:40:31")。
パイプを「ブルーからレッドにつなげ」("00:41:24")という指示があるところで、「日々人」はレッドとレッドをつなぐ。
僕の感想としては、(指示と違うことをしてもいいのかなぁ・・・)(事故が起きるんじゃないか・・・)。
本作の編集上ちょうどこの訓練と同時刻と解釈できてしまうようなときに、「六太」は「日々人」の家で、NASAの宇宙飛行士の伝統にしたがってかかれた「日々人」の遺書をみつける。
僕は、宇宙に飛び立つ前に「日々人」の身になにかおこるんじゃないかと思いながら視聴を続けたのだが、なにもおこらなかった・・・
月面ではたしかに「日々人」が消息を絶つわけだから、彼の身になにも起こらなかったわけではない。しかし、僕は、指示とは違うことをしたがゆえに、月に行く前の「日々人」の身に何かがおこるのではないかと予想していたのだ。それが、なにも起こらなかった。
「日々人」が同僚の「ダミアン」をかつぎ上げるとき、自分の生命維持装置を捨て、「ダミアン」のそれをパイプで自分の体につなぐシーンがあるから、あの訓練のシーンはそれの伏線ではあるのだろうが、訓練時の「ブルーからレッドにつなげ」という指示はなんだったのだ?
僕には不明だが、ま、いいや。
たぶん、この指示は画面にうつった動作とはべつのことを意味していたんだろう。
(5)
本作を視聴しようと決めたとき、本作をみたあとの僕は、宇宙関連の道にすすまなかった自分の来し方をふりかえって、精神的に真っ逆さまに落ちていくのではないか、と予想していた。
落ちていくのを承知のうえで本作を視聴したのだが、幸か不幸か、精神的に落ちていくことはなかった。
そうはいっても、この点について自分の来し方を冷静に振り返る精神的な余裕はまだ持てないでいる。
いまの僕の立場としては、「夢」を語ることのすばらしさを、すばらしいものとして、支えていきたいということ。
それにつきる。
この記事は以上。