■テレビドラマ「迷路荘の惨劇」(金田一:古谷一行、1978年)をみた。
古谷一行が金田一耕助を演じたテレビドラマ「迷路荘の惨劇」(全3回、1978年放送)をDVDで視聴した。
原作:横溝正史
放送年:1978年
本作は横溝正史シリーズⅡのなかの一作。
そして、横溝正史シリーズⅡの最後をかざる作品。
原作を読まずに視聴した。
名作だった。
本作は以前一度はレンタルしてきたのだが、視聴する時間がなくて、未見で返却。
いつか視聴すればよい。
再度のレンタルを急ぐつもりはなかった。
が、最近、これまでツタヤの店頭での扱いのなかった、横溝正史シリーズⅡのなかの3つの作品(「黒猫亭事件」「不死蝶」「真珠郎」)が「昭和キネマ横丁」の企画でツタヤの店頭で扱われはじめたのをきっかけに、その三作を視聴した。
それらの作品の出来はともかくとして、どうせならツタヤの店頭にある作品はいまのうちに視聴しつくしてしまおうと思い直して、本作をレンタルしてきた。
正直なところ、本作のできに期待していなかった。
が、本作は予想をこえる名作であった。
良すぎてビックリした。
原作は未読だから、原作と比較してなにごとかを云々することはまったくできないし、かりに原作を読んであったとしても、映像作品は映像作品で完結した一個の作品である以上は、それ自身の構成と構造の出来不出来だけで感想を述べるべきであろうと思う。
で、本作をみて。
良い。
すごく良い。
いかなる理由であれ、殺人はおぞましい。
が、そうした殺人云々とはべつに、篠崎夫婦の恋模様がきれいすぎる。
13年間思い続けて、経緯はともあれ、ついに結婚が実現。
「しずこ」は篠崎の13年間の思いを知らないままに、新しい夫を殺す前提での《政略結婚》をするが、ついには本気になってしまう。
夫を厩に呼び出そうとしたにもかかわらず、それをはたすことができないのも、その翌日離婚を切り出すのも、その本気さゆえなのだ。
200年前の出来事の呪縛のなかで苦しい人生であった。
それは「お糸」も同じ。
すべてが終わったあとの《大団円》がすばらしい。
愛する妻を思い、死にゆくのを見届ける夫。
「お糸」さんの告白の迫力と切なさ。
「お糸」さんの告白をきかなかったことにする金田一の優しさ。
ありきたりな表現になってしまうけど、金田一の優しさなんだよ。
本作は全3回。
都合、各回にたいする予告編が3つあり、それらもDVDに収録されている。
最終回にたいする予告編の末尾。
金田一が「僕がうかつだった。でも、こうなったほうがむしろよかったのかもしれんな。」と言っている。
そのシーンは本編には存在しない。
これは翌週の物語の展開について視聴者をミスリードする編集だ。
しかし、この予告編はけっして《悪》ではないと思った。
さて。
うえで述べたように、僕は本作の原作は未読である。
が、原作はKindle版で手もとにある。
そのKindle版をみたら、予想通り、冒頭に登場人物を紹介する箇所があった。
映像と原作とでは登場人物の数がはっきり異なる。
事件の推移、結末など物語の展開の点で映像が原作をどの程度変更しているのかは、原作を完全に未読の今の時点では僕にはわからない。
しかし、映像は映像で筋が通っていて、見ごたえがあった。
よい作品だった。