■テレビドラマ「八つ墓村」(金田一:稲垣吾郎、2004年)をみた。
稲垣吾郎が金田一耕助を演じたテレビドラマ「八つ墓村」(2004年放送)を視聴した。
原作:横溝正史
放送年:2004年、フジテレビ
おやっ?
でも、僕はこういうテイストがけっこう好きだったりする。
それに、短い尺に物語をおさめるには、こういうストーリーテリングもいいんじゃないかなぁ。
世にも奇妙な物語チックな映像の効果もあって、これはこれでひとつのエンターテイメントになっていると思った。
僕にはけっこう面白かった。
さて。
鶴子が寺田氏と結婚していないとか、「典子」がいないとか、東屋・西屋がないとか、美也子が久野医師の家に住んでいるとか、いろんな設定の変更はある。
そうだとしてもこのドラマは原作をかなり忠実になぞっているといってよい。
このドラマは慎太郎と相思相愛な仲にある美也子が田治見家の財産を慎太郎に相続させたくて一連の殺人事件を引き起こすという線でストーリーの筋を通している。
美也子と慎太郎が相思相愛であるという設定も原作をふまえたものであるから、その点でもこのドラマは原作をなぞっている。
(市川崑・豊川悦司の「八つ墓村」では、美也子は慎太郎に財産を相続させたくて事件を起こしたわけだが、2人のあいだの関係は美也子から慎太郎への片思いだったんだよな。)
本作は辰弥の母・鶴子と父・亀井陽一とのロマンスを丁寧にえがいている。
これが僕には好ましかった。
鶴子もやさしくて、きれいだったなぁ。
1977年の野村・渥美の「八つ墓村」にあっては尼子の子孫が落ち武者殺しの首謀者の子孫を皆殺しにするというかたちで過去と現在がつながれ、祟りが前面に押し出されたとすれば、1996年の市川・豊川の「八つ墓村」は、犯人である美也子の先祖が尼子であることを可能性として示唆するにすぎないとはいえ、その示唆を作中に折り込んだという点で、野村・渥美の「八つ墓村」の影響を受けているといえる。
そして、本作。
かつて落ち武者殺しに村でただ1人反対した亀井の子孫である辰弥が落盤にあっても生き残り、黄金を発見する。
殺人、落盤諸々で結果的に88人が死亡し、8の倍数ということで八つ墓村の落ち武者の祟りとの関連が示唆されるのにくわえて、落ち武者殺しに反対した亀井と辰弥との血のつながりがあきらかにされることによっても過去と現在の連続性が作り出され、祟りとの関連が示唆されるわけだ。
亀井の子孫だけの生き残りを決定づけるというかたちで死の決定づけとは反対方向での《祟り性》を作中に折り込んでいる本作は、1977年の野村・渥美の「八つ墓村」と1996年の市川・豊川の「八つ墓村」をふまえているという点で系統をおなじくしており、ここに「八つ墓村」映像化史の系統樹ができあがる。
三中信宏氏の系統樹曼荼羅に一連の「八つ墓村」をつけ加えて欲しいものだ、とチラッと思った。
(古谷一行が金田一を演じた「八つ墓村」(1978年)は僕には面白くなかったから、中身も良くおぼえていない。祟り性による過去と現在の連結という点では、古谷一行の「八つ墓村」はこの系統樹には入り込まないということができるようなストーリー構成だったような気がするが、たしかではない。(いい加減だなぁ))