新編 膝枕

智に働きたいと思いながら、なんかやってます。

■「サトラレ」をみた。 追悼:深浦加奈子

映画 サトラレ のDVDをみた。
 (副題:TRIBUTE to a SAD GENIUS)

まず、この映画のデータを記録しておこう。

原作:佐藤マコト
監督:本広克行
音楽:渡辺俊幸
脚本:戸田山雅司
撮影:藤石修
美術:部谷京子
照明:水野研一
録音:芦原邦雄
編集:田口拓也

主題歌:
「LOST CHILD」 大沢伸一藤原ヒロシ feat. クリスタル・ケイ

出演:安藤政信鈴木京香八千草薫、そして、深浦加奈子

製作年:2001年

ぼくはこのブログで映画・ドラマ鑑賞の記録をいくつも記事にしてきたが、ここまでこまかく制作スタッフを列挙するのはこれが初めてだ。

(DVDの「作品解説」をみながら、ここに書き起こした)

それはひとえにこれがいい作品だと思うから。


* * *

僕がこの映画を見るのは今回が初めてではない。

劇場ではみていないが、2001年あるいは2002年にすでにレンタルビデオで初見している。

その後もレンタルビデオで何回かの再見を繰り返した。

ただ、DVDでみるのは今回が初めてだ。

昨日この作品を借りてきたのは、まず、八千草薫 がめあてであった。

というのは、映画 交渉人 真下正義に関する記事のなかでもしるしたが、ここに、「八千草薫」がほんの短いシーンだが出演しており、もっとしっかり彼女の演技を拝見したい、とおもった。

そして、監督の「本広克行」。彼のつくる映像をもっとみたい。

このふたつが主な理由だ。

(よければ、ここをご覧ください → 「「交渉人 真下正義」をみた。」

そして、今回この作品を見始めるまでは失念していたのだが、女優 「深浦加奈子」 がこの映画に看護師役で出演している。

彼女はすでに物故している。まだお若かったのに。

私の青空NHK) はじめ、彼女は 《悪女》 役が多かったように思うが、なかなか存在感のある女優さんであった。彼女が物故してから、僕が彼女の出演作を見るのはこれが初めてだと思う。

それが、この記事のタイトルに「追悼:深浦加奈子」と付け加えた理由である。


* * *

ストーリーに関しては僕がここに紹介する必要はないだろう。

それに、僕は原作の漫画を読んだことがない。

ここで記録に残したいのは、ほとんど次の一点のみ。



映画の最後。

安藤政信八千草薫をおぶって桜の下を歩く。

そこにきれいなテーマ音楽が重なる。

で、クレジットが上がりつつ、画面が暗くなる。

その後、延々クレジット。

このクレジットのところでながれるのが

「LOST CHILD」 大沢伸一藤原ヒロシ feat. クリスタル・ケイ

はじめてこの作品をみたときから、この主題歌が耳から離れない。

この映画の内容にふさわしい曲調か否かと問われれば、すこし考え込まざるをえないというのが正直なところなのだが、チェロの《うねうね》を中心にした弦の伴奏ではじまり、女性の歌がクレジットに重なる。これがなんともいえず、うつくしい。


* * *

今回DVDではじめてこの作品を見たというのは、上に述べたとおりなのだが、多くの方がすでにご存じのように、DVDは特典映像満載、そして、音声もいくつも選べる。

制作過程が紹介されていたり、本広克行監督のコンメンタリーがついていたり、と大変お得。

制作過程の紹介で監督の表情が見れたこと、そして、この記事を書いている時点では僕はごく一部しか耳にしていないが、監督のコンメンタリーをきいたこと、それによって、監督がこの映画に込めた思いに、ほんの少しだが、ふれることができた。

文学作品と同様、映画も、あくまでも、最終的に完成した作品だけをもとに、いろいろな感想を述べるのが正道なのかもしれない。

しかし、僕がうえに記した最後の桜の下のシーンについて、監督が「このシーンをとるためにこの映画を作った」といった趣旨の発言をしていることに、妙に納得がいった。

このシーンをいいものにするために何度も撮影を延期したらしい。

つまりは、《よい光》 をえるために、だ。

そんなコンメンタリーを耳にしたあとで、このシーンを見直すと、たしかに、ものすごく美しい。

何も知らずにみていたときから、うつくしい、とは思っていたが、監督の発言を知ったあとで見直すと、もっと美しく感じる。

映像美へのこだわりなんだね。

踊る大捜査線」でもそうだが、あのカメラワークのワクワク感がたまらない。

あれも監督のこだわりなのらしい。

映画ファンにはこうしたことはすでに周知のことなのかもしれないが、本広監督のこだわりを言葉で明確に知ったあとに映像を頭のなかに映し直すと、そのこだわりが実にうまく実現されていることに驚く。


本作品は130分。

映画としてはごく普通のサイズだと思うが、実は今の僕にはこの程度の時間さえも集中力が持続しない。

しかし、この作品では130分が実に短く感じた。


いろいろ書きたいこともあるが、今回はここまで。