■「ナビィの恋」をみた。
僕自身この映画で沖縄音楽を久しぶりに耳にしたわけだし、沖縄民謡の大御所たち、民謡以外にも沖縄の芸能界を代表する超有名人が出演しているのであるから、それについて触れた方がよいのだろうが、今はこれを話題にしない。
劇場公開の時点でぼくはこのキャスティングを知っていたはずなのに、たったいまこの映画を見るまで完全に忘却の彼方にいっていたのはどうしたことか。
ものすごくいい映画だということは劇場公開の時点できいていたのに、みようとしなかったのはどうしてなのかわからない。
だって、そのとき僕はまさに沖縄にすんでいたのだから。
さて、今回この映画を初めて見た。
特典映像で中江監督が自身の口で明確に言っているのだが、監督は「ミュージカル映画」を目指したのだという。
ナビィがサンラーと駆け落ちをしたあとのこと。
奈々子の家の庭に島の人たちがあつまっている。
歌が歌われる中で、奈々子と福之助の婚約発表がなされ、つづいて、二人の結婚式、さらに、二人の間に子供がたくさん生まれてのお祝い…と、ひとつの空間で、一息に幸せな時間が描ききられる。
暗転なしのストーリー展開で、監督の力量にみせられた。
で、沖縄のエートスがよく出ているなぁと思ったのは、この幸せな時間、島の人たちが踊り歌っている中で、ブーゲンビリアの庭の石垣の向こうに島の警察官が一緒に踊っているのがみえること。
監督も細かいことをよくやってくれるね。
それと同じシーンで、奈々子の父親がおじいの後ろで太鼓をたたいていること。
映画の中ではこの父親はろくでもない男のようで、登場するシーンも少ないのだが、音楽の場面ではしっかり登場してくる。身近なおじさんがみんな芸能人というのも沖縄的だ。
ナビィがサンラーと駆け落ちをするよく晴れた日。
ナビィがおじいの買ってくれたマッサージチェアにすわっていて、奈々子がブーゲンビリアに水をやっている。
奈々子の赤いワンピースとブーゲンビリアの赤い花の色とそれに沖縄の青い空…と、監督はものすごく美しい映像をきりとってみせたものだ。
作品全体の構造と内容、心理描写の妙などについては、初見時の感想としてはとくに記録する必要はないだろう。再見したときにあらためて感動すればよい。
マイケル・ナイマンがこの映画のためにテーマ曲を書き下ろしたようだ。これにはおどろいた。これだけ記録しておく。
あと、ケルト音楽について。
たしか、映画「タイタニック」のなかで、三等客たちが楽器を奏で歌い踊るシーンがあったと思うのだが、それはケルト音楽だった印象がある。「ナビィの恋」でもケルト音楽が登場する。だからどうというわけではないのだが、音楽好きとして記しておく。