新編 膝枕

智に働きたいと思いながら、なんかやってます。

■映画「おくりびと」をみた。

映画「おくりびと」のDVDをみた。


 公開:2008年、131分

* * *

本作がいろんな映画賞をとったことは知っている。

本作のとあるシーンがお笑い番組のパロディーの対象になっているのをみたことがある。

他のDVDの予告編に収録された本作の映像の断片をみたことがある。

それ以外では、僕は本作のことを知らなかった。


実際に本作を視聴して、腹立たしく感じる面と良さを感じる面と両方あるが、総体としては(いい作品だな)と思った。

(「腹立たしく感じる」といっても作品の構成そのものにそう感じたのではなく、このようなテーマでストーリーのある映像作品をつくる以上、現実の人間の社会にみられる諸々の人間模様のうち、このテーマにかかわる部分を作中にえがきださざるをえないわけであり、僕はそうした人間模様に腹立たしさを感じたわけだ。)

これは僕の無知の告白にほかならないが、僕は、本作が話題になる前は、納棺師という職業の存在を知らなかった。意識にのぼらせることがこれまで一度もなかった。

ゆえに、納棺師が現場で何をしているのか、そもそもまったく知らなかったし、いちいちの所作の意味もまったく知らなかった。

本作では、納棺師の仕事を紹介するDVDを制作する状況を作中におりこむことで、納棺師の所作の意味を視聴者にごく自然に伝えることに成功していたと思う。

そういう点では、本作はじつに巧みな構成をもった作品である。


が、どうにもこの女優が。。どうしてこんなにうすっぺらなのか。。。もうすこし深みがあってもいいのに。。。

要所要所でものすごく興ざめ。


小林大悟」が父親の遺体を前にしたシーン。

葬儀屋の男ふたりがその遺体を棺桶に(乱雑に)いれようとするのを「大悟」が制止する。

それをうけて「大悟」の妻である「美香」がいうセリフ。

「この人は納棺師なんです」

(いま手元にDVDがないので、この箇所のセリフを正確に再現できないのが残念だ)

ぼくはこのシーンには猛烈に感動したが、この女優の所作に感動したのではない。


感想のまとめ。

人間の心の動きの表現のしかたには不満はある。しかし、取り扱っているテーマ、物語の展開は実によいものだと思った。

だから、へたなテレビが本作をへたなパロディーの対象にするのは許しがたい愚行だと思う。


感想ではないが、最後に。

僕が興味を持つのは、この人間社会がまわっていくのに欠くことのできない、すくなくとも現在の社会制度、現在の習慣においては欠くことができないと考えられる人間の営みのある局面にふれるひとつの職業についての、周囲の人々の無知、無理解、および、それにもとづいて生じる人々の行動の愚かさと無神経さである。