新編 膝枕

智に働きたいと思いながら、なんかやってます。

■映画「バースデー・ウェディング」(その1)~木村多江の言葉~

(映画「バースデー・ウェディング」のDVDをみた)
今回はさっそく本題にはいる。 ====

まず、木村多江のつぎの言葉を紹介しよう。


(撮影現場の海岸にて)
<シナリオを読んだときの感想は?>

木村多江: 私は読んだときはすごく泣いてしまったんですけれど、実際に「紀美子」という役を演じることに関しては、なるべく泣かないでやりたいっていうのがあって。それはビデオレターを作るところなんですけど、けっこう台本には「泣く」っていっぱい書いてあったんですけれども、「ぽろぽろ泣く」とかって書いてあったんですけれども、できれば私は泣かないで。どうしても泣いちゃうところはしょうがないと思ったんですが、なるべく泣かないでやりたいな、と。でも、もうここは泣きましょう、というところはもちろん相談してあったんですけど。
(特典映像「木村多江インタビュー」の冒頭)



(ビデオレターの撮影に入る直前)
<今日からクランクインですね。>

木村多江: そうですねぇ。最初からハードなシーンで。どうしましょう。今日は朝から水分をたくさんとってきました。泣くんでね。まぁ、泣くというよりも、泣いていただくために。がんばります。
(特典映像「メイキング」の“06:00”から)



ここに引用した言葉は、映画「バースデー・ウェディング」のDVDに特典映像として収録された木村多江に対するインタビューの一部である。

以前、私はこのブログに「「星になった少年」をみた。」という記事を掲載した(2010年1月20日)(プラス方向での感想を記したものではないので、私は読者にこの記事の参照をおすすめしない)。私はその記事のなかで「私が泣くことなしに、お客さんを泣かせたい」という言葉を、演技に対する木村多江の心構えをあらわすものとして紹介した。

この言葉をカギ括弧(「 」)でくくってはいるが、これは私が記憶だけに頼って記したものであり、不正確な引用であることは明らかであった。演技に対する木村多江の心構えをあらわす重要な言葉であるがゆえに、この箇所を正確に紹介するべきであると考え、このたび、映画「バースデー・ウェディング」本編を再見するとともに、特典映像から木村多江の言葉を正確に書き起こした次第である。

木村多江の言葉を紹介することが、本稿作成の主要動機であった。彼女の言葉を冒頭にとりあげたのは、そのためである。

* * *




私事になるが、私が明確に「木村多江ファン」を自認するようになったのは、まさに「バースデー・ウェディング」のDVDで彼女のこの言葉を知ってからである。

私が木村多江を知った経緯、および、私が鑑賞した木村多江出演作品については、すでに私はこのブログで記事にしてあるので、ここであらためて記すことはしない。

ファン歴の観点からは私はまったくの新人である。私が鑑賞した木村多江出演作品の数も、まだまだ少ない。

しかし、上で紹介した木村多江の言葉が、私が映画やドラマなどの映像作品をみて、俳優(あるいは演出、脚本)に好感をもったりもたなかったりするときの基準になってしまっていることを、正直にここに記しておく。

(これまた私事になるが、私が木村多江のこの言葉に引きつけられたというのは、私が多少とも文芸論になじみのある人間であったことと無関係ではない。)

私は、身体と声の表現(表情、しぐさ、台詞まわし、など)といった、いわば作品の表にあらわれた「木村多江」に惹かれただけでなく、彼女が何を考えて演技をしているのか、という作品の裏の面、基本的なイデーの面にも惹かれたのであり、だからこそ、私は「木村多江ファン」を自認し、それを公言することに躊躇しない。

(この稿、つづく)